アイ・クリエイツレポート #3
8.LA3日目(3月20日水曜日)つづき
Best Of CSUN
An Overview Of JawBone
An Automatic Web Content Accessibility Compliance Tool For Section 508
Storybooks: An Important Step Toward Literacy
/An Introduction To AT Appolications For Blindness And Low Vision
Challenges Of Accessible Web Design
/Designing An Accessible Library Catalogue For The Web
基調講演のあとは、ユーディット主催の日本語によるセッションが行われました。CSUNについての初心者向けの解説と、今回の見所及びお勧めのセッションなどを教えていただきました。香川大学教育学部の中邑賢龍先生からも、AAC(拡大・代替コミュニケーション)についての説明をしていただきました。何しろ初参加で英語もおぼつかない私たちにとっては、大変ありがたいセッションでした。 早速、この日はお勧めのセッションに参加することにしました。
JawBoneというのは、音声認識と音声読み上げが合体したようなソフトウェアで、聴講者も多く、実演をしながらのセッションでしたが、音声の認識率がかなり高そうで、読み上げに至っては誰か人間がそこで喋っているような錯覚をしそうなくらいになめらかでした。
次の An Automatic Web Content Accessibility Compliance Tool For Section 508 というのは、日本IBMの発表で、あのホームページ・リーダーの制作に携わった女性が発表するということで、かなり期待をして行きました。会場は思ったとおり満員状態で、日本人聴講者も多く、発表が終わったあとも名刺交換や直接質問をしたい人たちで長い列ができたほどでした。セッションの内容も画期的なもので、ホームページを508条に対応するための自動チェッカーを開発中という内容で、既存の有名なチェッカーではカバーできなかった項目がいくつか実現されているということでした。まだ開発段階ということですが、508条に対応していない既存の膨大な量のホームページを抱えているサイト管理者にとって、自動的にチェックしてくれる上に修正もできるとあっては、これほど有難いものはないだろうと思われました。
午後2時(日本時間21日午前7時)、日本の家族と連絡をとろうとマリオットホテルに設けられたプレイルームへ向かいました。ここでは、部屋の壁に沿ってコの字型に置かれた机に、LANでインターネットにつながっているパソコンがたくさんあり、あらかじめ用意しておいたhotmailのメールアドレスから日本へメールを送ってみました。当然ながら、日本語キーボードではないのでローマ字での作文です。が、よく考えてみたら日本からわざわざノートパソコンを持ち込んでいたので、次の日は自分のノートパソコンを持ち込み、LANをつなぎ変えさせてもらって、晴れて分かりやすい日本語でメールを送ることができたのでした。日本からのメールも、最初は無理してローマ字で書いてもらったのですが、ちゃんと日本語サイトの表示もできるということがわかり、慣れないローマ字での作文は必要ありませんでした。
普段使っているケーブルテレビのメールアドレスがアクセスできるかどうか試してみましたが、こちらは失敗に終わりました。同じLANなのでもしかしたらうまくいくかと思いましたが、メールサーバーにアクセスできず送受信ともできませんでした。
ツアーの仲間の中には、電話で近くのアクセスポイントにつなぎ普段どおりのメールでやりとりしているかたもいました。海外ローミングサービスがあるプロバイダだとアクセス可能のようです。
セッションの合間には、展示場を見て回りました。この写真は、PLEXTORという会社のブースで、DAISYという、視覚障害者向けのデジタル音声情報システム(デジタル化された録音図書)の携帯型録音再生機について説明していただきました。従来のものよりだいぶ小さくなったということでしたが、大きめのお弁当箱くらいの大きさでバッテリーが内臓されている分重く感じました。もしわたしが携帯するなら、もうちょっと小型化して欲しいと思いました。
9.LA4日目(3月21日木曜日)
Sign Language 3D Animation Software Authoring Tool
Accessing The Curriculum With Technology
/Certification For AT Trainers: A New Scheme
Section 508 And The Future Of Accessibility
Erik Welhenmayer. A Blind Mountain Climber's Quest Of The Seven Summits
Using Virtual Reality To Improve Walking In Individuals Following Stroke
Evaluation Of Pedestrian Info & Communication Systems-A, For Visually Impaired Persons
Creating DAISY Digital Talking Books In The New Format With Book Master
一番印象に残っているセッションは、何と言っても Section 508 And The Future Of Accessibilityでした。 一番大きな会場で行われたのですが、満員でしかも発表者席には508条関係者がずらりと重々しく並び、聴講側には事実上世界の標準となっているこの法の将来を読み取ろうとピリピリした空気が張り詰めていました。
また、世界の7大陸最高峰を制覇した全盲の Erik Welhenmayer さんのセッションはとても人気があり、会場内の半分以上が視覚障害のかたたちで占められ、どこかのテレビ取材も入っていたようでした。
Sign Language 3D Animation Software Authoring Tool では、カエルを人型にデフォルメしたキャラクターが、あらかじめインプットされている文章にしたがって、手話を表現するソフトの紹介でした。行き帰りの飛行機の中で救命具の取り扱い説明のビデオがCGで作られていたのを思い出したのですが、聴覚障害のかたにとってはとても便利な手段ではないかと思いました。あらかじめセリフが用意できるものであれば、手話通訳やパソコン要約筆記の人手がなくても対応でき、講演会やセミナーあるいは、生の舞台公演などの参加がしやすくなりそうです。
Evaluation Of Pedestrian Info & Comm...は、日本の三菱プレシジョンの発表でした。これは、視覚障害者向けの外出支援システムで日本語ではトーキングサインという名前で紹介されています。例えば病院の入り口に赤外線の発信機を取り付けておき、受信機を持った人が入り口の前に来ると、「病院の入り口です」というメッセージを受け取ることができるので、安心して進めるという具合です。その際、ちゃんと入り口の方向に向いていないとメッセージが受け取れないので、入り口の横の壁にぶつかるという心配も避けられるようです。現在すでに病院や市役所など主に公共施設周辺で実施されているところがあるそうです。つい外出を控えてしまいがちな障害者にとっては、心強い味方になりそうだと思いました。
この日は、一日中セッションに参加しましたが英語力不足により、ほとんど具体的な内容を聞き取ることはできなかったので、資料を収集することと、セッションの雰囲気を記憶に留めることに専念しました。この次に参加するときまでにもっと英語を勉強しなければと痛感しました。
10.LA5日目(3月22日金曜日)
DAISY Around The World
/Conducting Complete AAC And Computer Access Evaluations
W3C User Agent Accessibility Guidelines
Educational IT: How Students & Employees With Disabilities Can Access IT
TPB: An Easy To Use PC-Based DAISY Book Reader
/Web Content Transcodeing For Voice Output
LAについて5日目ともなると、すっかり時差ぼけはとれてホテル生活も板についてきました。セッション最初の日は、昼食をちゃんとレストランに入って食べたのですが、毎日豪華な昼食をするほどお腹も空かないし時間の余裕もないので、近くのコンビニでサンドイッチを買ってきて、飲み物と果物を足すと十分でした。資金節約にもなり、一石二鳥です。
この日は一番大きな部屋でDAISYのセッションが午前中いっぱい行われており、日本障害者リハビリテーション協会情報センター長の河村宏さんもみえていました。
たくさんのセッションに参加しましたが、発表者自身が視覚障害者であるかたがとても多く、会場内にも盲導犬がたくさん歩いており、うっかり踏みつけないように気を配らなければならない状況でした。この盲導犬たちは、しっかりと口を閉じて(犬なのに!)、声も出さず真剣な表情で、ご主人を誘導する役割に誇りを持っているようにさえ見えました。当社社長は電動車椅子に尻尾を引かれてもほとんど鳴かずに耐えていたところを見かけたと言っていました。涙ぐましいほどの忍耐力で毎日働いているので、盲導犬の寿命が短いというのもうなずけます。
また、電動車椅子の人がとても元気に走り回っていたのが印象的でした。中には、会場である二つのホテルの間を車椅子でありながら、しっかり両足でこいで移動している人がいて、どういう障害なのか理解不能の場面にも遭遇しました。